結構な腕前で!
「あれでは茶会にも出られませんし、師範としては困りものなんですけど、あそこまではっきりとした主張ができるというのも羨ましいですね」

「え、せとみ先輩、師範なんですか」

 何か、せとかはともかく、せとみが茶を点てるところは想像できない。
 入部してからというもの、せとみが茶を点てているところなど見たことはないのだが。

「一応師範免許はありますよ。僕も」

「せとか先輩はわかるんですけど」

「まぁ僕らが免許を取ったのはかなり昔ですし。せとみは家柄もあって、とりあえず取ったって感じですから、あんまり茶道に興味はないでしょうね」

「いいんですか、そんなんで」

「二人いるから、いいんじゃないですか」

 てくてく歩くせとかを、萌実はこそりと見上げた。
 はるかとはるみはそっくりだが、せとかとせとみは正反対だ。
 何故同じ双子なのに、こうも違うのだろう。
 しかも、いとこ同士。

「双子といっても、いろいろあるんですねぇ」

 一卵性の双子だと、片方が熱を出すともう片方の具合も悪くなるとか、怪我をするともう一人も同じところが痛くなるとか、そういった不思議な繋がりがあるとか聞くが。

 せとかとせとみに、そういう密な繋がりは見えない。
 双子の全員が全員、そういうわけでもないということか。

「似てるところもありますよ。身体能力とかは同じですしね。成績もほぼ同じ。性格くらいでしょうかね、明らかに違うのは」

 自覚はあるらしい。
 ここまで違うと当然かもしれないが。

「そうですねぇ。せとみ先輩は、軽い感じがしますもんね。初めて会ったとき、私まだ先輩と喋ったこともなかったし、こんな軽い人だったんだって、ちょっとびっくりしましたもん」

「え?」
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