結構な腕前で!
「あっ! いえっ! あの、大丈夫ですっ! 私は気にしてませんのでっ!!」

 慌てて萌実は双子の言葉を打ち消した。

「そうですか。でも、そうですね。ちょっと気を付けないとですかね……」

 そう言って、せとかは自分の手に視線を落とした。

「南野さんは、僕のものではないですもんね」

「とととととんでもないですっ!! あのっ! わたくしでよければ、いくらでも使ってくださいましっつ!!」

 先輩が望むなら、喜んでモノになりますとも! と若干危うい心中を抑えつつ、萌実は鼻息荒くせとかに言った。
 せとかはちらりと萌実を見、ふ、と口角を上げた。

「そう言って頂けるとありがたいです」

 柔らかい笑みで言う。
 ぎゃーーっ! 堪らん!! と萌実は激しく悶絶した。
 顔に出なかったのが奇跡なぐらいだ。
 はたして本当に出ていなかったかは定かでないが。

 息が荒くなっている萌実をよそに、せとかは不満顔のせとみに向き直った。

「僕の力がどれほどのものか、南野さんの力もどれほどなのかを見てみたい。危ないですよ、ちょっと下がっていていてください。手出ししないでくださいね」

 何となく有無を言わさぬ迫力に、せとみは構えを解いた。
 はるかとはるみも、ちょっと顔を見合わせたが、少し後ろに退く。

「南野さんは、ここにいてください」

 せとかに促され、萌実は扉のすぐ前に。
 危ないって言ったくせに、何で私を最前線に置くのだ、と思ったが、すぐにせとかが萌実の背後にぴたりとついた。
 そのまま手を伸ばして、南京錠を外す。

「はるか、はるみ。開けてください」

 せとかが萌実の後ろから、彼女の両手を取って言った。
 動く気配がない。
 ここから力を放つつもりだ。
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