結構な腕前で!
「……嘘だろ」

「「す、凄い……」」

 せとみと双子が、感心したように呟いた。
 道場は正面の壁に大穴が開いている。
 壁は一面真っ白だ。
 おそらく吹き飛ばされた煙が粉々になって飛び散ったのだろう。

「ふぅ」

 はた、と気付けば、萌実は背後のせとかにもたれているし、せとかは萌実の肩に顎を乗せた状態だ。

「うわぁっ!!」

 慌てて身を起そうとした萌実だが、変に後ろに体重をかけていたせいで、踵がずるっと滑る。

「危な……」

 せとかが踏ん張ろうとしたが間に合わず、結局二人して地面に倒れ込んだ。

「ご、ごめんなさい」

 転ぶときでもせとかはちゃんと自分が下になってくれる。
 萌実が謝罪しつつ起き上がると、せとかも着物を払いながら立ち上がった。

「怪我はありませんか?」

「はい。先輩こそ」

「僕は何ともないですよ」

 そう言って、せとかは自分の体調を見るように、少し胸に手を当てた。

「うん、特に何ともない」

「ほんとか? あんなすげー力出しておいて」

 ずいっとせとみが身を乗り出す。
 どうやら大丈夫か、というのは、単に転んだからではなく、その前の力の影響も含めてのことらしい。
 萌実は己の両手をまじまじと見た。

「どうしました?」

 そういえば、もうすっかりいつものせとかだ。
 一言だけだったが、あの耳元で囁かれた『何も考えるな』は格好良かった、としみじみ思う。

 言葉遣いまで変わるなんて、まるで二重人格のようだ。
 考えてみれば、せとみも戦うときは柄が悪くなる。
< 85 / 397 >

この作品をシェア

pagetop