結構な腕前で!
---お上品じゃ戦えないのかもね---

「南野さん? どこか怪我しました?」

 またも、どうでもいいことを考えていた萌実は、せとかの言葉にようやく我に返った。

「え? あ、いえ……」

「手が気になりますか?」

 萌実が両手をじっと見たまま固まっているので、気になったらしい。
 そろ、とせとかが萌実の手を取った。
 また無駄に萌実のテンションが上がりそうになったが、そこに双子の騒がしい声が割って入る。

「あ~もぅせとかぁ、駄目だってば」

「さっきだって、後ろから萌実さん抱いちゃってさ~」

「「えっちなんだから~」」

 途端に、ぱっとせとかは手を放してしまう。

「あ! いえ! そそ、そんなことは全然! あの、それよりも手が凄く熱くなったので、火傷とかしてないかなって思っただけで」

 わたわたと言い訳する。
 いや厳密には言い訳ではない。
 本当にあのときは手から火を噴いたかと思ったほど熱かったのだ。

「ああ、それはまぁ、力がそこに集まった証拠でしょうね。実際には熱はないはずですので、大丈夫ですよ」

「あ、そ、そうなんですか」

 意味なく両手を擦り合わせながら、とりあえず萌実は道場へと目をやった。
 これは掃除が大変そうだ。
 しかも大穴を開けてしまった。

「あのぅ。穴開けちゃいましたけど」

「あ、そうですね。日曜大工部に、修理を頼まないといけませんね」

 さらっと言い、せとかは茶室へと皆を促す。
 日曜大工部……。
 どんな部活なんだ。

 しかも家の壁の修理って日曜大工レベルで直るのか?
 いろいろ納得いかないが、何となく皆慣れてそうだ。

 部室を破壊するとか、多分日常茶飯事なのだろう。
 だからこそ、他の部室とは隔絶された山の中に居を構えているのだろうし。

---相撲部の人に恐れられる茶道部って、わけわからない---

 ひそりと思いながら、萌実も皆に続いて茶室に戻った。
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