結構な腕前で!
「ふふふ、ホウ酸団子ですか。面白いですね」

 おお! と萌実はせとかに見惚れる。
 今まで声を上げた笑顔を見たことがあっただろうか。

「凄いわね、萌実さん」

 こそっとはるみが、小声で萌実に耳打ちした。

「あんだけ怒ってるせとかを笑わすなんて」

「え、えっと。私は別に、笑わそうとしたわけじゃないんですけど」

 そもそも初めにホウ酸団子に例えたのは、はるみである。
 それに真顔で乗った萌実が面白かったのかもしれないが。

「まぁ狙ってないからこそ面白かったんだろうけど」

 こそこそと話しながら、萌実とはるみはせとかを窺う。
 相変わらず肩を震わせながら、せとかはようやく茶釜に身体を向けた。

「あのぉ。先輩は私の力は最強だって言いますけど、だったら私にも、橘先輩のお手伝い、できるんじゃないですか?」

 萌実の力が誰より強いのであれば、萌実がやれば、はるかやはるみに負担をかけずに済むのではないか?
 そう思って申し出てみると、せとかは柄杓を持った手を止めて、萌実を見た。

「そうですね……。でも、南野さんにはあまり力を無駄遣いして欲しくないんです」

 もしかして、心配してくれてる? と嬉しくなったが、どうもそういう意味ではないらしい。

「慣れてないうちは、力に頼りがちですが、内在する力は身体にどの程度負担があるかをちゃんとわかった上で使わないと、いざというとき役に立ちません」

「あ、まぁそうですね」

 大体わかっていたことだが、やはりせとかは合理主義だ。
 何だか駒の一つにしか思われていないようで、密かに傷つく。

---まぁ別に、先輩の彼女なわけでもないんだから、しょうがないけどね---

 内心ため息をつきつつ、萌実はちらりとはるみに目をやった。
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