結構な腕前で!
「でも、サポート的に知っておいても損にはならないわ。それに、力の使い方だって、せとかが教えてるわけじゃないでしょ?」

 はるみが言うと、せとかは口を引き結んだ。

「あくまでサポートレベルでなら、まぁいいでしょう」

 憮然と言う。

「あとは喧嘩に強くなって欲しいですね」

「喧嘩?」

「南野さんなら素手で戦っても大丈夫だと言ったでしょう。武器がいらないのは、非常に合理的ですよ。いつでもどこでも、身一つで戦えるわけですから」

 素手で戦えるのが萌実だけ、というのは如何なものか。
 一応女なんですけど、と萌実は胡乱な目でせとかを見る。
 もしかして、せとかには女子扱いもされていないのだろうか。

「反射神経は良さそうですね。前、床から湧き出た魔を叩き潰したのは素晴らしかった」

 くるりと柄杓を回して、にこりと笑う。
 この笑顔に騙されてはいけない、とは思うのだが、笑顔を向けられると舞い上がってしまう。

「はいっ! 頑張ります!」

 高らかに宣言した萌実は、タイムリーに天井からもわんと煙が湧き上がるのを目にとめた。

「魔、発見!」

 叫ぶなり、萌実は拳を握って畳を蹴った。

「うりゃっ!」

 飛び上がりながら、ぶん、と握り拳を振る。
 が、拳はすかっと空を切った。
 目測を誤ったらしい。

「にゃーっ」

 思い切り空中で腕を振ったので、変にバランスを崩してしまった。
 萌実はずだん、と畳に倒れ込む。
 そこに、すくっと立ち上がったせとかが素早く身を寄せた。

「ちょっと失礼」

 どかん、と萌実を蹴り、煙の正面に回り込むと、せとかは柄杓を一閃した。
 ぶわ、と煙が霧散し、ばらばらと落ちる。
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