結構な腕前で!
「その意気ですよ、南野さん。ほら、まだ魔はいるようです」

 振り返って、またもにこり。
 萌実の気持ちに気付いているのかと思うほどだ。
 蹴られたショックも忘れ、萌実は懐から扇を取り出すと、ぱっと広げた。

「えいっ」

 煙に向かって、ばさばさと扇いでみる。
 見た目は煙なのだから、風を送ればそれだけで壊れるのではないかと思ったのだが。

「あ、さすがにそれでは無理ですよ」

 横から、すぱん、と柄杓で煙を殴りながら、せとかが言った。

「煙のようですけど、殴れたりするでしょう? 倒したら固形になりますしね。気体ではないんですよ。風で飛べば楽なんですけどね」

 説明している間も、せとかは柄杓を振り回して、迫る煙を容赦なく殴りつけている。

「あんまり大きかったら、南野さんの力ではしんどいかもしれませんねぇ。素手だと力がいりますし」

 せとかは柄杓を器用に使って攻撃している。
 自分の負担は最小限に留めている感じだ。
 そこに、戻ってきたせとみが乱入した。

「おらぁ! そんなちんたらやってたら、いつまでたっても捌けないぜぇ!」

 叫びながら、閉じた扇で煙を両断していく。
 途端にせとかは、柄杓を降ろしてすとんと座る。
 攻撃には積極的に参加しないようだ。

 こうして見ると、せとかは戦い方も合理的。
 最小限の動きで煙を捌いていく。

 対してせとみの動きは派手だ。
 まさに『大暴れ』。
 楽しそうだからいいとしても、確かにこれを全校生徒の目に触れさせていいものか。

「なるほどね。せとか先輩が大人しい分、より目立ちますしね」

「それによって僕が霞むのであれば、それはそれでいいんですけど」

 徹底して目立ちたくないようだ。
 萌実としても、そっちのほうがありがたい。

 何となく二人の関係性が見えたな~、と思っていると、いきなり足首がひやりとした。
 目を落とすと、煙が巻き付いている。
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