結構な腕前で!
「ちょっと待ってくださいっ。先輩、さぼりすぎ!」

「だって団子のないぜんざいなんて嫌だよ。戦ったら疲れるんだ。疲れたときには甘いものだろ?」

「団子は甘くないです。甘いのはぜんざいなんだから、いいじゃないですか」

「箸休め的なものがないと飽きるだろ」

「団子ぐらい、作ればいいじゃないですか」

 ぎゃーすか言いながらも、せとみは根負けしたように、その場に留まった。

「大体茶室のほうには道場に集まってるものよりも強力な魔が出るんですから、裏部長が滅多に出ないなんておかしいですよ。戦うのが好きなんだったら、茶室のほうが戦い甲斐があるでしょう?」

「まぁね……。でも強ければせとかが対応するし」

 ちょっと拗ねたように言う。
 あれ、と萌実はせとみを窺った。

 そういえば、橘家と北条家の双子は両極端のような。
 橘家の二人は常に一緒にいるが、北条家の双子は一緒にいることは稀だ。
 男と女の違いもあろうが。

「せとみ先輩は、せとか先輩と仲悪いんですか?」

 直球で聞いてみると、せとみは少し首を傾げた。

「悪くはないよ。別に嫌いじゃないし。ただ俺たちは力の差が歴然としてるだろ。劣等感はある」

 これまたはっきりと言う。

「でも劣等感があるってことを、そんなはっきり言えるってことは、どろどろした関係じゃないんですね。せとみ先輩の性格からして、うじうじしなさそうだし」
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