結構な腕前で!
「萌実ちゃん、よく見てるね」

 せとみが、ちょっと驚いたように言った。
 もっとも萌実がよく見ているのはせとかであってせとみではないのだが。

「わかりますよ、それぐらい。まぁ橘先輩たちが仲良すぎるから、せとみ先輩たちが悪く見えちゃうんでしょうけど」

「ああ、あいつらはほんと、二個一だからな。見た目も性格もそっくりだし」

「私はいまだに実は見分けつかないんですけど。やっぱりせとみ先輩はわかります?」

 見た目も性格もそっくりな双子であっても、どちらか一方を好きなのであれば、せとみにとっては明らかな違いがあるはずだ。
 それがわかれば、萌実も見分けがつくかもしれない。

「わかるよ。俺からしたら、全然違う」

「えっ全然ですか。せとか先輩とせとみ先輩は確かに全然違いますけど」

「そうか? 俺たちだって髪型揃えたら、普段は見分けつかないんじゃないかな」

「いえ、だって雰囲気が違いますもん。せとか先輩は暗いけど、せとみ先輩は明るい」

「……言うね、萌実ちゃん。せとかのこと嫌いなの?」

 せとみが苦笑いする。
 反射的に、萌実はぶんぶんと首を振った。

「まさかっ! そんなこと、あるわけないですよ!」

 咄嗟に強く否定してしまったものの、これでは非常に怪しい。
 案の定、せとみはにやりと笑った。

「おやおや? もしかして、萌実ちゃんはせとかが好き?」

「ななななな、何でそんなことっ!」

 真っ赤になりつつ慌てる萌実は、最早誰の目にも明らかに、せとみの言葉を肯定している。
 にやにやと笑いながら、せとみは、なるほどね、と頷いた。

「そっかぁ。そりゃ、俺とせとかの違いもわかるわけだ」
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