初恋のキミは最愛ヒーロー
「この汚い手、さっさと退けろ」
壱夜くんが指摘したのは、私の肩に置かれた銀髪の男の手のこと。
もちろん、男が怒らないわけがない。
「てめぇ、俺に指図すんじゃねぇ!」
私の肩から手が離れたかと思うと、壱夜くんの顔面めがけて殴りかかる。
反射的に目をギュッと瞑った私。
少し鈍い音が聞こえてきて、ビクッと体が跳ねた。
どうしよう、私のせいで壱夜くんが……。
おそるおそる目を開ける。
「う、うそっ……」
視界に映ったのは、殴られた壱夜くん…ではなくて、銀髪の男の拳を片手で受け止めている姿だった。
「ま、マジかよ…」
まさか止められると思っていなかったらしく、銀髪の男は目を見開く。
小さく後退りする男の手を荒々しく離した壱夜くんは、右手で素早くパンチを繰り出す。
そして、男の鼻先に触れそうな位置でピタリと止めた。
「失せろ。次、この女に絡むようなことがあったら、お前を殴り飛ばす」