初恋のキミは最愛ヒーロー
低い声と鋭い眼光に、銀髪の男の顔が青ざめていく。
「お、お前っ……まさか……ヨル!?」
「だったら?」
壱夜くんがキレ気味に言葉を返すと、男はカタカタと震えだした。
「す、すみませんでした…!!二度と、この女の前には現れないようにしますんで、命だけは助けて下さ……」
「さっさと消えろ」
冷たく放たれた言葉に、男は足をもつれさせながら暗闇へと逃げて行ってしまった。
はぁ…と短く溜め息を零す壱夜くん。
真っ白な息が冷たい空気に溶けた。
「あ、あの……ありがとう。でも、どうして壱夜くんがここに……」
「お前、こんなとこで何してんだよ!!もし誰も助けに来なかったら、あの男に何されてたか分からねぇんだぞ?」
声を荒げる壱夜くんに、私は体を震わせる。
今まで怒られたことは色々とあったけど、こんな風に感情的な言い方をされるのは初めてだ。
「ご、ごめんなさい…」
軽率な行動をした私が悪いから、怒られるのは当然。
声を絞り出して謝ると、私の頭にポンと大きな手がのせられた。