初恋のキミは最愛ヒーロー
「去年の夏頃、駅前で男子中学生から金を脅し取ってる三人組の不良たちを偶然見かけたから、止めに入ったことがある。アイツら、俺を見るなりビビッて奪い取った金を置いて逃げてった」
「えっ!?」
「駅周辺は、あの不良グループのテリトリーらしいから、多分…紅月がつるんでる奴らの誰かだと思う」
「ということは、紅月くんの言葉が指してたのは…その出来事なのかな?他に心当たりは……」
壱夜くんに訊ねようとした私だったけど、不機嫌そうに顔を歪める姿を見て、言葉を呑み込んだ。
そうだ…。
壱夜くん、過去を詮索されるのは好きじゃないって言ってたんだった…。
「む、無神経に色々と聞いちゃって、ごめ……」
「つーか、紅月のことを気にするのも話をするのも止めろ」
「えっ?」
「お前の口から紅月の名前が出ると、腹立つから」
素っ気なく話す壱夜くんに、パチパチと瞬きをしながら頷く。
今の、もしかしてヤキモチ…?
………いや、そんなわけないか。
歩くスピードを少し速めた壱夜くんを追いかけながら、苦笑いを浮かべた。