初恋のキミは最愛ヒーロー
「碧瀬さん」
階段を降りようとしたところで、1階から上がってきた紅月くんと鉢合わせした。
「じゃ、じゃあね…」
この前の一件もあり、一人で紅月くんと接するのは危ないかもしれない…と思った私。
さり気なく挨拶だけして、この場を離れようとすると…
「少し、時間をもらえない?」
優しい声と共に手首の辺りを掴まれた。
「私、今日は……」
「ここだと、すぐに他の女子に見つかって落ち着いて話が出来ないから、ちょっと来て?」
「えっ!?」
紅月くんは私の手を引いて、近くにある資料室の中に入ると、扉をゆっくり閉めた。
「ごめんね、急に。話したいことがあったから」
少し眉を下げて気まずそうに謝る紅月くん。
表情は柔らかくて、声も穏やかなトーンなのに、なぜか怖さを感じてしまう。
「話って…?」
平静を装いながら訊ねると、紅月くんは小さく頷いた。
「一昨日の夜、つり目の銀髪男に声掛けられてたよね、碧瀬さん」