初恋のキミは最愛ヒーロー
えっ……?
どうして、それを知ってるの…?
人づてに聞いたような口振りじゃなく、まるで見ていたかのよう…。
「もしかして、俺が気付いてないと思ってた?」
フッと嘲笑う紅月くんに、心臓が勢いよく跳ねた。
「いつから、気付いてたの…?」
「大通りを曲がって細い路地に入った後かな。ああいう静かな道だと気配に敏感になるんだよね。最初は誰か分からなかったけど、道を曲がるタイミングとかにチラチラと何度か後ろを見て、碧瀬さんだって分かったよ」
し、知らなかった…。
ある程度、距離をとって歩いてたから気付かれるわけないと思ってたのに…。
「碧瀬さんって勇敢なんだね。だって、普通は…あんな街灯も疎らで薄暗い夜道なんて歩きたくもないでしょ。危ないとか思わなかった?」
「思ったけど、駅前で…紅月くんが一晩中遊ぶって話をしてるのを聞いたから心配だったの。体調面とか…」
「…………」
予想外の答えだったのか、紅月くんは目を見開く。
「面白い女の子だね、碧瀬さんって」
少し笑みを浮かべたのも束の間、私の耳元に顔を近付けてきた。
「俺の彼女になってよ」