初恋のキミは最愛ヒーロー
「か、彼女…!?」
「碧瀬さんが彼女なら退屈しない気がするし、何より女避けになるでしょ。最近、女子からキャーキャー騒がれんのが鬱陶しく感じてきてたんだよね」
いつも、女の子たちに優しく接してる紅月くんが、そんな風に思っていたなんて…。
驚きや戸惑いが心に押し寄せる。
言葉を発せられないまま後退りすると、紅月くんは私の両手を掴んで傍の壁に押しつけた。
「どうする?付き合って損は無いと思うけど?」
「紅月くん、離して…」
手に力を込めて振りほどこうとするけれど、やはり男の子の力には適わない。
為す術もなく唇を噛み締めた時だった。
「もしも俺と付き合ってくれるなら、黒河内の噂を流すの止めてもいいよ?」
えっ……?
低く放たれた声に、ドクンと鼓動が荒く波打つ。
「紅月くんが、あの色んな噂の発信源なの?」
「……そうだよ」
返ってきたのは肯定の笑みだった。