初恋のキミは最愛ヒーロー
「取り込み中?俺には嫌がってるように見えるけど?」
淡々と話す壱夜くんは、私を隠すように目の前に立つ。
大きな背中が頼もしくて、心の中に安堵感が広がっていくのを感じた。
「黒河内もムキになることがあるんだな。ますます奪いたくなったよ、碧瀬さんのこと」
壱夜くんから零れる舌打ちの音。
表情は分からないけれど、かなり苛ついているのが雰囲気で伝わってくる。
「お前、何がしてぇんだよ」
氷のような冷たい声に、紅月くんはフッと笑った。
「てめぇに復讐するためだよ、ヨル」
さっきまでと言葉遣いが一気に変わる。
駅前で不良の男の子と話していた時と一緒だ。
「どうせ、何のことだか分かってねぇだろ?だったら、こう言えば思い出すか?」
紅月くんは、壱夜くんの胸ぐらをガシッと掴んだ。
「中学2年、蒸し暑い夏の夜、黒いメッシュを入れた赤髪の男」
「……………」
「心当たり…あるみたいだな」
紅月くんは低い声で呟くと掴んでいた胸ぐらを離した。