初恋のキミは最愛ヒーロー
「お前らも、作業が終わってるなら直ぐ帰るように。じゃあな」
大きな本を棚に戻した先生は、さっさと資料室から去って行った。
二人きりの室内。
壱夜くんは入り口の方を見たまま、沈黙している。
さっき、紅月くんが言っていたことに関して、何か考えているのかな…。
気になるけど、何も聞かない方が良さそう…。
そう思っていると、不意に壱夜くんが私の方に視線を向けた。
「あ、あの……危機感が無くてごめんね。ついこの前、壱夜くんから指摘されたばかりなのに」
きっと開口一番に怒られるに違いないから、先に謝ろう。
紅月くんと会ったのは偶然のことだけど、そもそも、ここに連れて来られるような原因を作ったのは私だから。
「別に、碧瀬が謝る必要ねぇだろ」
「えっ…」
「今回は、たまたま紅月と鉢合わせして、アイツに強引に連れ込まれた…ってところだろ?」
「う、うん…」
「だったら、お前は悪くない」
キッパリと断言した壱夜くんは、私の腕を掴んだ。