初恋のキミは最愛ヒーロー
「ところで、アンタは何してたわけ?」
「今日から新しい高校に転入するんですけど、道に迷ってしまって…。あいにく、スマホも家に忘れて来てしまったので、現在地も高校の場所も分からないんです。だから、いったん家に引き返そうと思っていたところで…」
「ふーん。それで、戻る道は分かってんの?」
「えっと、確かあの角を曲がって、その後は丁字路を…」
あれ?
右に曲がるんだっけ?
それとも左?
「その様子だと、戻る道すら分かんなくなったんだろ」
「は、はい…。完全なる迷子になったみたいです」
最悪だ…。
順調どころか前途多難じゃん…。
盛大な溜め息を零そうとした時。
「高校生にもなって、迷子かよ」
ヨルさんが呆れたようにフッと笑う。
うそ…
わ、笑った…。
初めて見る表情に驚いたのと同時に、胸の奥がキュウッと小さな音を立てた。