初恋のキミは最愛ヒーロー

「そもそも、アイツが忘れ物をしたのだって、夕飯前に帰ろうとしてたところを俺が引き留めたからなんだ。アイツがシャーペン使ったのは、夕飯の後だったから」


神楽くんは唇を噛み締める。


後悔を滲ませる姿を見た私は、首を横に振った。


「ううん、それは神楽くんのせいでも壱夜くんのせいでもないよ」


「えっ…」


「悪いのは、身勝手な理由で攻撃をしてきた赤髪の男。だって、その人が何もしてこなければ、神楽くんはケガすることなく、壱夜くんに忘れ物を渡せたでしょ?」


「う、うん…」


「神楽くんたちの行動が、トラブルの引き金になったわけじゃない。何事もなく進むはずだった時間に、不測の事態が飛び込んできただけ。だから、そんなに自分自身を責めちゃダメだよ」


「…………」


神楽くんはピタリと足を止める。


驚いた様子で目を見開いていた。


「あの、上手く言葉に出来なくてごめんね」


分かりにくかっただろうな…と反省していると、神楽くんはフワリと優しく笑った。



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