初恋のキミは最愛ヒーロー
「痛っ……」
「それは、こっちのセリフ。思いっきり体当たりすんじゃねぇよ」
顔を上げると、ヨルさんの冷ややかな視線が突き刺さる。
「すみません…」
私ってば、走るのに必死で前をよく見てなかった…。
だけど、ヨルさん…なんでここに立ってたんだろう?
「アンタ、歩くの遅い。全然、俺についてこれてねぇじゃん」
「はい…。迷惑かけてしまって、すみません…。離れないように頑張って走りますので……」
「そうじゃなくて、俺の歩き方が速いなら速いってハッキリ言えよ。無理して俺のペースに合わせようとすんな」
えっ…?
思いも寄らぬ言葉に、瞬きを繰り返す。
「も、もしかして…私が追いつくのを待っててくれたんですか…?そのことを言うために…?」
「違う。俺の姿を見失って変な方向に歩いて行かれたら、余計に面倒だから。ただ、それだけ」
再び進み始めたヨルさんの斜め後ろを歩く。
さっきみたいに距離が広がることはない。
これも、ヨルさんがスピードダウンしてくれたおかげだ。