初恋のキミは最愛ヒーロー
「も、もちろん警察には連絡してあるよ。ねっ、神楽くん」
「うん。だけど、現場に駆けつけるまで少し時間が掛かるって言われちゃってさ」
「じゃあ、なんで警察官が来るまで待ってなかったんだよ」
それなら、わざわざ芝居なんてする必要なかったのに。
二人を見ながら眉をひそめると、碧瀬が口を開いた。
「だって、待ってる間に壱夜くんの身に何かあったら嫌だったから」
「え?」
「空き地の外にたむろしてた不良たちが次々と中に入っていくのを目にして、いくら壱夜くんが強くても、あの人数を相手にしたら大ケガするかもしれないって思った。そうしたら居てもたってもいられなくて」
「碧瀬…」
「私、いつも壱夜くんに助けてもらってばかりだから、壱夜くんがピンチの時は、全力で助けたいんだ…」
俺の目を真っ直ぐ見つめて優しく微笑む姿に、胸が温かくなっていく。
全力で助ける、か…。
そんなこと言われたの、生まれて初めてかもしれない。
ほのかに抱いた嬉しさが、心をくすぐった。