初恋のキミは最愛ヒーロー
「あと、兄貴から話は聞いた」
「…そうか」
低い声で呟くと、桃舞の表情が固くなった。
「なあ、壱夜。前々から、お前に言いたかったことがあるんだけど…」
その言葉に、肩がビクッと反応して鼓動が脈打つように速くなる。
今日の夢と同じ切り出し方だ…。
声のトーンとか、纏う雰囲気まで一緒。
こういうのを正夢って言うんだろうな…。
夢と現実との境界にいるような不思議な感覚を伴いながら、唇を結んで身構えた。
「あの夜のこと、ずっと謝りたかった。俺のせいで壱夜を苦しめて、傷つけて、本当にごめん」
えっ…?
思いも寄らぬ言葉に、目を見開く。
「なんで、桃舞が謝るんだよ…」
戸惑いを含んだ声が零れ落ちる。
「悪いのは、全部…俺だろ」
あの日…桃舞の部屋を出る前に、忘れ物の確認さえしておけば、防げた出来事なんだ。
明らかに俺の過失じゃねぇか。
「壱夜は悪くない。だって、お前が忘れ物をしたのは、俺のせいだから」
桃舞は苦しげに眉を寄せた。