初恋のキミは最愛ヒーロー
「あの日、俺は…もう少し壱夜と遊びたくて、夕飯前に帰ろうとしていたお前を引き留めた。俺がワガママを言わなければ、忘れ物なんてせずに帰っていたはずだ」
「桃舞、それは…」
「本当は俺のせいなのに、今まで謝らなくてごめん。ここまで苦しめ続けて、本当にごめん…」
何度も謝る桃舞の姿に、胸が苦しくなる。
謝らなかったんじゃなくて、謝れなかったんだろ?
あの日のことを口にしたら、俺がどんな気持ちになるのかとか、色々と考えて言えなかったんだよな?
お前、優し過ぎるんだよ…。
怖い思いも痛い思いもして一番辛いはずなのに、自分自身を責めて苦しんできたなんて…。
俺は悲しげな表情を滲ませる桃舞を真っ直ぐ見つめた。
「桃舞は、俺に謝る必要ない。だって、お前は…俺に忘れ物をさせたくて引き留めたわけじゃないだろ?それに、ああいうのはワガママって言わねぇんだよ。俺、お前に引き留めてもらって嬉しかったんだから」
「えっ…」
驚いて瞬きを繰り返す桃舞に、少し笑みを浮かべて頷く。
長居するのは家の人に迷惑だろうと思って早く帰ろうとしたけど、本心では…もっと桃舞と遊んでいたいと思ってたんだよ。
俺も、お前と同じこと考えてたんだ。