初恋のキミは最愛ヒーロー
「10才の時に、いきなり母親から再婚相手として紹介された男なんだよ、アイツは!!」
鋭い叫び声に、胸がズキンと痛む。
冷たさを帯びた瞳は、“新しい父親なんて望んでいなかった”と訴えているかのような気がした。
「家に居ても、俺は空気みたいな扱い。会話なんて殆どしたこともないし、俺が何をしていても無関心。あの人にとって、俺は邪魔者以外の何者でもない」
「そっ、そんな……」
思わず口にしてしまいそうになった言葉を呑み込む。
紅月くんの家庭の事情や抱えてる気持ちをよく知りもしないで、“そんなことない”って決めつけてしまうのは無神経だよね…。
「だから、不良グループに居る時だけが、自分の心を解放できる唯一の居場所だった。仲間と一緒に遊んだり、色んなこと喋ったり、本当に楽しい毎日だった。でも、そんな日々も、あの夏の夜の事件で一変した」
紅月くんは眉をひそめる。
「グループは消滅して、仲間とも疎遠状態。帰る場所を失った俺は、また孤独に夜の街を彷徨い始めた」
そっか…。
その辛さや悲しさが、壱夜くんへの恨みや怒りへと発展していったんだ…。