初恋のキミは最愛ヒーロー
他のお客さんに紛れて一緒に出ようと思っても、あいにく店内に居る客は私一人。
店員さんは気弱そうな細身の男性で、とてもじゃないけど、“何とかして欲しい”とお願い出来るような雰囲気ではない。
困ったな…。
あの不良たちが解散するのを待ってたら、何時に帰れるか分からない。
早く帰らなきゃ、お母さんが心配する…。
荷物整理や掃除で疲れてるのに、こんなことで迷惑は掛けたくない…。
「…………」
こうなったら…
かなり気は進まないけど、強行突破しよう…。
お喋りに夢中っぽいから、私が出て行っても意外と気付かないかもしれない。
意を決した私は、マフラーをシッカリと巻き直してからレジで会計を済ませる。
“ありがとうございました”と抑揚のない店員さんの声を背中に受けながら、出入り口へ。
大丈夫、大丈夫。
心に何度も言い聞かせながら、足早に外へと出た時だった。