初恋のキミは最愛ヒーロー
最近、学校で同じような会話を耳にすることが多くなってきた。
“今まで流してた黒河内の色んな噂話、あれは俺の勘違いだったって、みんなに広めとく”
あの言葉を、早速…玲音くんが実行に移してくれているからだ。
効果は徐々に出始めていて、不良だの万引きしたことあるだの、様々な根拠のない不快な噂は、だんだん収束してきている。
ただ…
これまでの噂の影響や、普段の壱夜くんがクール過ぎることもあり、“壱夜くん=怖い”というイメージは、なかなか払拭されていなくて…
気軽に話し掛けてくる生徒は、今まで同様、殆どいないのが実情だ。
でも、もう少し月日が流れれば…
そのイメージすら、薄れていくかもしれない。
早くそんな日が来ればいいな…。
期待を膨らませていると、スマホを見ていた壱夜くんが不意に私に視線を向けた。
「不穏な視線を感じると思ったら、碧瀬か。なんで、ニヤニヤしてんだよ」
「今、情に脆くて優しい男の子だって言われてたよ?」
「誰が?」
「壱夜くんに決まってるじゃん!」
声を弾ませると、壱夜くんはギロリと玲音くんを睨んだ。