初恋のキミは最愛ヒーロー
低く放たれた声に振り向く。
すると、壱夜くんが焦った顔でキョロキョロと辺りを見回す姿が目に映った。
「壱夜くん、どうしたの…?」
「キーケースが無い」
「えっ…」
それって、綺麗なガラスボトルのストラップがついているものだよね…?
「どこで落としたんだ…。今のパレード会場?いや、それより前かも…。昼メシを食べてる時は、まだあったんだよな…」
眉を寄せて、独り言のように呟く壱夜くん。
こんな深刻そうな顔をするところ、初めて見た…。
でも、キーケースなんだから当たり前か…。
家の鍵が無くなったら、大変だもんね…。
「俺…ちょっと探してくる。悪いけど、お前らだけで観覧車乗ってきてくれ」
「お、おい…壱夜!」
戸惑う桃舞くんの声に構わず、来た道を戻ろうとする壱夜くんのジャケットの裾を、私は咄嗟につまんだ。
「ま、待って!私も一緒に探すよ!」