初恋のキミは最愛ヒーロー
『なあ、せっかく来たんだから、壱夜を夏祭りに連れて行ってもいいんじゃないか?熱は無いんだろ?』
そんな時、俺たちのやり取りを聞いていた父さんが口を開いた。
『ええ。でも……』
『体調が心配なのは俺も一緒だけど、壱夜がずっと楽しみにしていたお祭りだからなぁ…。ここまで来て、行かないってのは、ちょっと可哀想だよ』
口を尖らせていた俺の前にしゃがんだ父さんは、頭をポンポンと撫でる。
『大きな打ち上げ花火、近くで見たいもんな?』
『うん』
微笑む父さんに、俺も笑顔で頷いた。
『ほら、こんなに目をキラキラさせてる壱夜を見るの、久しぶりだろ?』
『そうね…。それじゃあ、みんなでお祭りに行こっか!』
『やったぁ!』
『ただし、マスクをしていくこと、無理はしないこと、ちょっとでも具合が悪くなったら必ず言うこと、これだけは約束してね?』
『うん!』
声を弾ませながら、母さんと指きりをした。