初恋のキミは最愛ヒーロー
「碧瀬の席は、あそこ。橘(たちばな)の隣だから」
「はい」
先生は窓際の一番後ろの空席を指差す。
教壇から降りた私は、足早に自分の席へ。
静かに椅子に座ると、ポンと右肩を軽く叩かれた。
「碧瀬さん、私…橘 紫葵(しき)。一応、このクラスの委員長やってます。よろしくね!」
栗色のショートヘア、男の子と見間違えてしまいそうな中性的な顔立ち。
“カッコいい美少女”という表現がしっくりくるような感じの女の子だ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「分からないことや困ったことがあったら、遠慮なく言ってね!」
「ありがとう…」
心強いなぁ…。
嬉しくて顔を綻ばせると、橘さんは少し寂しそうな表情を浮かべた。
「私も、碧瀬さんみたいな小柄で可愛らしくて、女の子らしい女の子になれたらな…。そうしたら、ヨルも…」
途中でピタリと話すのを止めた橘さん。
気恥ずかしそうに頬を人差し指で掻いた。