初恋のキミは最愛ヒーロー
『ほら、あやまって!早く!!』
その子の懸命に訴える声に、周りの人たちの冷たい視線が一気に二人の男たちに向けられて…
ばつが悪くなったのか、男たちは舌打ちをして人ごみの中へと逃亡。
姿が見えなくなった途端、女の子は心配そうな顔で俺の傍にしゃがみ込んだ。
『だいじょうぶ?』
『……うん』
『服、よごれちゃったね…。ヒジ、すりむいてる…』
手から提げていた巾着からピンク色のハンカチを取り出して、服や手についた砂汚れを落とし始めた、その女の子。
『そんなことしなくていいよ。キミのハンカチがよごれる』
『いいのいいの!ハンカチは使うために持ってるんだから、よごれるのは当たり前だよ』
そう言って、優しさ溢れる笑顔を浮かべる彼女だったけど、ふと視線を落とすとハンカチを持つ手が震えていた。
そこで、ハッと気付いたんだ。
男たちに勇敢に立ち向かっていた彼女も、内心はとても怖かったんだ…と。