初恋のキミは最愛ヒーロー
「わ、私だって休日は予定が入ってる時だってあるよ。大抵は暇だったりするけど」
「そりゃ、誰だって都合つかない時はあるだろ。俺が言いたいのは、そういうことじゃなくて…。さっきの女に花見に誘われた後の莉彩のリアクションだよ」
「り、リアクション…?」
「急に小声になってるし、不審者みたく目が泳いでソワソワした感じだった。いつもなら、もっとデカい声でハキハキと答えるくせに」
普段の私の声って、そんなに大きいのかな…。
至って、普通レベルだと思うんだけど…。
「突然のお誘いだったから、ちょっと驚いただけ」
「驚いたっていうより、動揺してる感じに見えたけど?」
「……そ、そう?気のせいだよ、気のせい!」
壱夜くんにニコリと笑みを向けた後、席に座った。
今の紫葵ちゃんとの会話のやりとり、見てないと思ってたらガッツリ見てたのか…。
壱夜くんの観察眼、鋭すぎる…。
内心ビックリしながら、窓の向こうに広がる景色を見つめた。
“お花見”っていう言葉には何年経っても、過剰反応してしまう。
お父さんと交わした約束だったから。
そして、その約束を約束のままにしてしまったのは、私のせいだから…。