初恋のキミは最愛ヒーロー
「あれ?雨、少し降ってきたんだね…」
「気付いてなかったのかよ。っていうか、質問の答えになってないんだけど」
「あはは…、ごめんね。えっと、ちょっと休憩中ってところかな」
無理やり明るい声で返すと、壱夜くんは呆れた表情で溜め息を零す。
「休憩って……。お前の住んでるマンションまで歩いて数分程度だろうが。こんなところで休んでるぐらいなら、家に帰って休めばいいじゃねぇか」
「疲れちゃったから、このタイミングで休みたくて…。それより、壱夜くんは用事あるんじゃなかったの?」
「もう終わったから家に帰るところだったんだよ。そうしたら、傘もささずにブランコに座ってる莉彩を見かけたから声を掛けただけ」
いつもなら、今の壱夜くんの言葉を聞いたら飛び上がるほど嬉しいはずなのに…
今日は、そんな感情も湧かない…。
「そ、そうだったんだね…。まあ、私のことは気にせず壱夜くんは家に帰って?」
作った笑顔で“またね”と言って、ヒラヒラと手を振る。
きっと、“ふーん、分かった”とか言って帰るだろう。
そう思っていたのに…。