初恋のキミは最愛ヒーロー
『すみません、○○病院までお願いします』
その後、準備を済ませて家を出た私たち。
タクシーで病院へ向かった。
『…………』
お母さんは、組んだ両手を額に押しつけて目をギュッと瞑っている。
お父さんの無事を祈っているんだ…。
そう思って、私も同じような姿勢で目を瞑った。
お父さんは死んだりしない。
絶対に大丈夫だもん。
絶対に……。
病院に着くまで、何度も何度も無事を祈った。
だけど…
『嘘でしょ…?あなた、目を開けて…!』
私たちの祈りが届くことはなかった。
病室のベッドで静かに眠るお父さんを目の当たりにして、泣き崩れるお母さん。
私は隣でお母さんの震える背中を擦りながら、呆然と立ち尽くしていた。
あまりにも突然過ぎて、ショックが大きくて、目の前の光景を受け入れられなくて…
涙が、出てこなかった。
もしかしたら無意識に制御していたのかもしれない。
泣いたら…
頬につたう涙の感触と温度で、“これは夢じゃなくて現実”だと思い知らされるのが怖くて…。