初恋のキミは最愛ヒーロー
「それじゃあ、本当の名前は…」
「………ちや」
「えっ?」
「黒河内 壱夜(くろこうち いちや)」
面倒くさそうに教えてくれた名前に、私の鼓動は大きく波打った。
黒河内 壱夜くんって言うんだ…。
綺麗な名前…。
「こ、これからは“壱夜くん”って呼ぶね!」
「いきなり名前で呼ぶわけ?」
「黒河内くんだと、ちょっと長くて言いにくそうな気がしたから。でも、どうしてもダメなら苗字に……」
「別にどっちでもいい。アンタの勝手にすれば?」
嫌なわけじゃないのか…。
それなら、“壱夜くん”にしよう。
その方が、距離が縮まりそうな気がするし。
「あの、これを機に私のことも名前で呼んでもらえたらと…」
「アンタの名前、忘れた」
「えっ…」
今朝、名乗ったばかりなのに…。
壱夜くんからすれば、どうでもいい情報だったのかな。
「……ったく、あからさまにショック受けた顔してんじゃねぇよ、碧瀬 莉彩」