初恋のキミは最愛ヒーロー
「あれ?この近くに喫茶店なんて無かったと思うんだけど…」
「もしかしてこの匂い、あそこからじゃねぇの?なんか人だかり出来てるし」
壱夜くんが指差した先は商店街の真ん中辺りにあるイベントスペース。
ちょっとした広場になっていて、お祭りやミニイベントを開催する時に使うらしい。
本当だ、賑わってる。
イベントやってるのかな?
「壱夜くん、私たちも見て行こうよ!」
「寄り道するの面倒くさい」
「通り道沿いなんだから寄り道には入らないって!」
「都合のいい論理展開すんなよ」
「まあまあ。少し見るだけだから」
全く乗り気じゃない壱夜くんに“ちょっとだけ”“ほんの少しだけ”と繰り返し声を掛け続けるうちにイベントスペースに到着。
人だかりの正体は行列。
その先にあったのはクリーム色に淡いグリーンのラインがはいった移動カフェの車だった。
あの車、前にテレビか雑誌で見たことある!
全国的に営業してる有名な移動カフェだ!
テンションが上がる私とは対照的に、壱夜くんは行列に並ぶ人たちに冷ややかな視線を向けていた。