初恋のキミは最愛ヒーロー

「壱夜くん!私たちも並ぼう!」


「並ばない。帰るぞ」


「ま、待って!」


イベントスペースから離れようとする壱夜くんの制服の袖を掴んで引き留める。


「この移動カフェ、色んなメディアにも取り上げられていて注目されてるカフェなんだよ!」


「ふーん」


「去年は私が昔住んでた場所に来てたみたいだし、先月なんて私が前に住んでた場所に来てたんだよ。タイミングが…って沈んでたところだったの!だから、こんな形で遭遇することが出来たのは凄く嬉しくて…」


力説している途中で壱夜くんは大きな手で私の口を覆った。


「分かったから、黙れ」


これは鬱陶しいと思ってるに違いない。


口から手を退けた壱夜くんは、不機嫌そうな表情をしていた。


一緒に居られる時間を少しでも長くしたかったんだけど、諦めるしかなさそう。


先に帰ってもらおうと思っていると、壱夜くんは無言で列の最後尾へと並んだ。



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