初恋のキミは最愛ヒーロー
「…………」
心臓がバクバクしていて、顔も熱い。
壱夜くんの顔を直視できなくて俯く。
どんな言葉が返ってくるんだろう。
返事を待つ時間が、やけに長く感じる。
まるで時間が止まっているかのような感覚に襲われていた時だった。
「悪い。俺、莉彩の気持ちには応えられない」
「………」
「好きな人がいるから」
壱夜くんの言葉が胸に突き刺さって、体中に痛みが走る。
掴んでいた彼の腕から手を静かに離した。
「そ、それって……もしかして初恋の女の子のこと?」
「えっ…」
「前に遊園地に行った時、桃舞くんから少し話を聞いたから…」
俯いたまま訊ねると、壱夜くんは少し沈黙してから“ああ”と一言だけ肯定の言葉を発した。
「そっか…」
目頭が熱くなる。
涙が零れないように必死に堪えながら、顔を上げて笑顔を作った。
「いきなり告白とかしちゃってごめんね。でも、ちゃんと答えてくれてありがとう。それじゃあ、バイバイ!」
なるべく明るい声を出して手を小さく振って、壱夜くんに背中を向ける。
そして、マンションへと走り出した。