初恋のキミは最愛ヒーロー
後悔のない選択肢
【壱夜side】
「あのさ、莉彩ちゃんとケンカでもしたのか?」
「………」
莉彩に告白されてから数日が経ったある日の放課後。
桃舞に“聞きたいことがある”と言われて屋上に連れて来られた俺。
質問の内容は何となく予想していたとおりのものだった。
「ケンカはしてない」
「だったら、なんで二人ともよそよそしい感じなんだよ。会話も殆どしないし、目も合わせないし」
「………」
心配そうな表情を浮かべる桃舞。
俺は静かに目を伏せた。
「……莉彩に告白された」
「えっ!?」
「だけど“好きな人がいるから”って断ったんだ」
「なるほど。それが理由か……」
桃舞の硬い声に頷くと、小さなため息が聞こえてきた。
「壱夜にとって、その選択は本当に正しかったのか?」
「は?」
顔を上げると、真剣な眼差しを向ける桃舞と視線が重なる。
「そう聞きたくなるような雰囲気を、お前が醸し出してるから」
その言葉を聞いた瞬間、胸に重い痛みが走った。