初恋のキミは最愛ヒーロー
「た、正しい……に決まってんだろ」
俺には、ずっと会いたいと願ってやまない初恋の女の子がいる。
その子のことが好きだから、莉彩の気持ちには応えられない。
俺の出した結論は間違っていない。
それなのに、どうして釈然としないんだろう。
「歯切れの悪い答え方だな。正しい判断をしたっていうわりには暗い顔してるし」
「……」
「なあ、壱夜……」
桃舞が何か話そうと口を開いたタイミングで屋上のドアがギイッと音をたてる。
振り向くと、入り口のところに立っている紅月の姿が目に映った。
「話してる最中に悪いな。これ神楽に返そうと思ってさ」
「あ、今日の英語のノート?明日で良かったのに」
「書き漏らした箇所は少しだったから。ありがとな」
桃舞にノートを手渡すと、紅月は俺の方に視線を向けた。
「お前に好きな人がいるなら、俺が碧瀬と付き合うことになったとしても別に構わないよな?」
ピクリと肩が小さく跳ねる。
もしかしてコイツ、俺たちの話を聞いてたのか?
目を細める俺に、紅月は口の端を少し上げた。