初恋のキミは最愛ヒーロー
「言っておくけど、あの入り口のドアが少し空いていて、偶然お前らの会話が聞こえてきただけだから。故意に盗み聞きしてたわけじゃないからな」
「ふーん」
まあ、こんなところで嘘つくようなヤツじゃないし、本当にそうなんだろう。
「それはともかく、さっきの言葉…どういう意味だよ」
「どういうって、そのままの意味に決まってんじゃん。黒河内が碧瀬と付き合わないなら、俺が攻めて振り向かせる」
「は…?」
「まだ、ちゃんと言ってなかったよな」
紅月は真剣な表情で俺を見据えた。
「俺、碧瀬のことが好きだから。友達としてじゃなく、一人の女として」
鈍器で心臓を殴られたかのような痛みに顔を少し歪める。
そんな俺に、紅月は不敵な笑みを浮かべると足早に屋上から出て行った。
何だよ、このザワザワとした落ち着かない気持ちは。
アイツが莉彩を好きだと聞いて驚いているからか?
多分、それだけが原因じゃない。
でも、渦巻く感情の正体がなんなのか自分にもよく分からねぇ。
歯を食いしばっていると、しばらく黙っていた桃舞が口を開いた。