初恋のキミは最愛ヒーロー
「いいのか?このままだと、莉彩ちゃんが紅月の彼女になるかもしれねぇよ?」
「いいも悪いも、俺は莉彩を振った。だから莉彩が誰と付き合うことになったとしても俺には関係ない」
「莉彩ちゃんが紅月を好きになっても構わないのか?」
「ああ」
それなら、それでいい。
莉彩が紅月を選ぶなら別に俺は…
「言ってることと表情が相反していて、説得力ゼロなんだけど」
桃舞はやれやれと言わんばかりの呆れた顔でため息をこぼした。
「不安、焦り、苛立ち。色んな感情が入り乱れていて心が穏やかじゃない。俺にはそんな風に見て取れるんだけど、違う?」
“違うに決まってんだろ”
そう言いたかったのに、声が出てこなかった。
なぜなら、桃舞の言葉が俺の心にストンと綺麗に落ちたから。
俺自身にも分からなかった感情の正体に、納得のいく答えを突きつけてきたからだ。
「図星?」
素直に肯定するのも癪で無言を貫いていると、桃舞は苦笑した。