初恋のキミは最愛ヒーロー
「壱夜、さっきの話の続きだけどさ…」
「……」
「初恋の女の子だけを想っているのなら、莉彩ちゃんからの告白を断ったことに対して、そんな風に深刻そうな顔して悩んだりしないんじゃない?」
「何が言いたいんだよ」
低い声をぶつけると、桃舞は人差し指で俺の胸元を軽く突いた。
「お前は莉彩ちゃんに恋してる。“好き”っていう自覚があるんだろ?」
「……っ…」
顔が熱くなる。
赤くなっているであろう俺の顔を桃舞に見られたくなくて、背を向けた。
「口から出る言葉とは違って、体の反応は素直だな」
「うるせぇ」
微笑ましそうに笑う声が聞こえてくる。
振り返って睨みつけてやりたいけど、今の自分の顔を見られたくなくて我慢した。
「さてと、壱夜が不機嫌モードになってきたみたいだから俺は先に帰ろうかな」
桃舞の足音が遠ざかっていく。
すぐに屋上から出ていくのかと思いきや、その足音は何故かこちらに近付いてきた。