初恋のキミは最愛ヒーロー

「自覚あるの、それだけかよ」


「へ?」


「バーカ」


よく分からないけど、怒ってはいないみたい。


嫌みっぽさは全開だけど。


「それはそうと、碧瀬…自分の家までの帰り道、ちゃんと把握してんの?」


「えっと、多分…」


先に帰ってしまうのかと思いきや、そんな心配をしてくれる壱夜くん。


ささやかな優しさに、嬉しくなる。


「なんで自信ねぇんだよ」


「今朝、正しいルートを通ってると思ってたのに、迷っちゃったので…」


100%完璧…とは言えないんだよね。


まさか、自分があそこまで方向感覚に乏しいとは思わなかったな…。


「んで、碧瀬の家…どこ?」


「あ、えっと…大通りから少し細い道に入ったところの10階建てのマンション。隣にお花屋さんがあって……」


「ああ、あそこか。んじゃ、家まで連れて行ってやるからシッカリ覚えろよ?」


「一緒に帰ってくれるの!?」


「また迷子になったら、哀れだからな」


歩き始める壱夜くんの後ろをついていく。


大きな背中を見つめて、笑みが零れた。


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