初恋のキミは最愛ヒーロー
「………」
その光景を食い入るように見ていた私だけど、右折待ちの大型トラックによって視界が遮られてしまった。
ドクンドクンと心臓が嫌な音を響かせる。
痛みが走る胸元をさすった。
落ち着け、私。
あの人が壱夜くんとは限らないでしょ。
後ろ姿が酷似していても、別人の可能性だって充分にあるわけだし。
きっと知らない人だよ。
必死に言い聞かせても、なぜか胸騒ぎは止まらなくて。
早く真相を確かめたいと思っていると、ようやくトラックが右折して、歩行者信号が青へと変わる。
すぐに先ほどの街頭の下に視線を向けると、男の人と制服姿の女の子はいなくなっていた。
足早に横断歩道を渡って辺りを見回してみたものの、それらしき人は見当たらない。
視界が遮られたのは、ほんの1,2分だったんだけどな…。
駅前はお店も多いし、大通りを外れると小さな通りや路地も多いから、どこに行っちゃったか分からないや…。
気になるけど、今日はお母さんも早めに帰宅するって言ってたし、遅くなると心配させちゃうから帰ろう…。
私は家に向かって歩きだした。