初恋のキミは最愛ヒーロー

「今、保護者の方に迎えに来てもらうように連絡するわね」


「ま、待って下さい」


「えっ?」


「実は、今日は母が仕事の関係で隣県に行ってるんです。夕方まで会議があるって言ってたので、夜じゃないと帰って来れないと思います」


この前、会議が長引けば夜遅くになるかもしれないって言ってた。


今頃は会議真っ最中だろうから、連絡なんかして心配させたくない。


布団をキュッと握りしめていると、私たちの会話を黙って聞いていた壱夜くんが口を開いた。


「だったら、俺が家まで送ります。帰る方向が一緒なので」


「めっ、迷惑かかるからいいよ。私、一人で帰れるし…」


思わぬ言葉に驚いていると、壱夜くんの大きな手が私の額を覆う。


「まだ顔色悪いし、熱もある。そんな時に一人で帰るのは危ねぇだろ」


いきなり触れられた衝撃で、更に体温が上がってしまいそう。


たちまち頬が熱くなるのを感じた。


「そうね、先生もその方がいいと思うわ。それじゃあ、黒河内くん…お願いしてもいいかしら?」


「はい」


頷いた壱夜くんは、額を覆っていた手を私の頭にポンとのせた。


< 381 / 436 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop