初恋のキミは最愛ヒーロー
「俺、お前の荷物を持って来るから少しだけ待ってろ」
「そ、それなら私が…」
「体調悪いんだから無理しようとすんな。すぐに戻ってくるから、それまで休んでろよ」
心配そうな眼差しと優しい声に鼓動が波打つ。
保健室を足早に出て行く壱夜くんの後ろ姿を見つめていると、“碧瀬さん”と呼ぶ先生の声が聞こえてきた。
「私、あなたの担任の先生に事情を話してくるわね。時間割を見ると、今は授業が入ってないから職員室にいると思うし」
「はい、よろしくお願いします」
「もし、私が戻って来るよりも先に黒河内くんが来たら、そのまま帰ってもらっていいからね」
「分かりました…」
先生も出て行って静かになった保健室。
ベッドから立ち上がって白いカーテンを開けた私は、部屋の廊下側の壁に掛けられた時計に視線を向けた。
この時間だと、化学の授業は既に終わって今は体育の授業中か。
私、一時間以上眠ってんだ…。
体調悪かったとは言え、まさか学校で倒れることになるとは思わなかった…。