初恋のキミは最愛ヒーロー
思い出の真実
【壱夜side】
「家に着いたぞ」
「……うん」
莉彩から鍵を借りて家の中に入る。
「そこが私の部屋…」
弱々しい声でドアを指差す。
部屋に入った俺は、ぐったりしている莉彩をベッドに寝かせた。
保健室を出た時よりも顔が赤くなってる。
熱が上がってるのかもしれない。
額を冷やした方が良さそうだけど、家の中を勝手に漁るわけにもいかないし…。
あっ、そう言えば…!
俺はバッグの中からグレーのスポーツタオルを取り出した。
今日の体育が終わった後に使おうと思って持ってきていたんだっけ。
でも莉彩と一緒に早退してきたから、未使用のまま。
よし、これを使おう。
洗面所の水道を使わせてもらって、タオルを冷たく濡らして、しっかりと絞る。
部屋に戻った俺は、莉彩の額にゆっくりとタオルをのせた。
「…ありがとう」
呟くように口にして瞼を閉じる莉彩。
熱で苦しそうな表情が少しだけ和らいだことにホッとしている自分がいた。