初恋のキミは最愛ヒーロー
「よし、移動だ移動!」
不良たちの中の誰かが私の腕を強く掴む。
大声出さなきゃ…。
大きく息を吸い込んだ時だった。
「アンタら、何してんの?」
どこからともなく聞こえてきた、低くて冷たい声。
俯いていた顔を上げると、不良たちの視線は同じ方向を見つめていて…
それを辿った先には、一人の男の子が立っていた。
背がスラリと高く、黒い厚手のパーカーのフードを深く被って、グレーのジーンズを履いている。
同い年ぐらい…?
いや、少し年上かも…。
ジッと見つめていると、不良の一人が舌打ちをした。
「マズい、あの男…“ヨル”だ」
「えっ、あれが例の…?」
ヒソヒソと周りから聞こえる小さな声に耳を傾ける。
彼は“ヨル”っていう名前なの?
マズいって、何が?
たちまち、頭の中は疑問符で埋め尽くされた。