初恋のキミは最愛ヒーロー
「あと、宣伝担当になった人は浴衣を着ることに決まったから、このあと莉彩ちゃんも着替えると思うよ!」
「ゆ、浴衣!?でも、私…浴衣なんて持って来てないよ?」
そもそも、お父さんが亡くなって以降、お祭りに行かなくなったから、小さい頃の浴衣しかないし…。
「それなら大丈夫!山丘さんの両親が着物や浴衣の販売やレンタルをしているお店を経営しているんだけど、今回…特別に浴衣を無償で貸してくれることになったの」
「そうなんだ」
知らなかった…。
山丘さんは、おしとやかで黒髪ロングが素敵な美少女。
彼女とは高2のクラス替えで同じクラスになったけど、まだあまり会話したことないんだよね…。
そんなことを考えていると、山丘さんが浴衣を抱えながら私たちの方にやって来た。
「碧瀬さん、お話し中にごめんなさい。浴衣の着付けをしたいので、少し時間もらってもいいですか?」
「は、はい。宜しくお願いします」
申し訳なさそうに声をかける山丘さんに、背筋をピンと伸ばしたままお辞儀をする。
別室で着付けをするということで、私と山丘さんは教室を出た。