初恋のキミは最愛ヒーロー
2年生の教室の一番端にある空き教室。
窓側のカーテンは閉まっていて、廊下側は一面に暗幕が掛けられていて、外から見えないようになっている。
山丘さんの話だと、文化祭期間中はこの部屋が2年生女子の専用更衣室代わりになっていて、仮装する生徒などが利用しているらしい。
「文化祭独特の賑やかな雰囲気いいよね。本番もいいけど準備している時がとても楽しくて」
「山丘さんの言葉、すごく分かる!みんなで心踊らせながら準備している時間っていいよね!」
最初は緊張気味だった私たちだけど、少しずつ会話を重ねるうちに、すっかり打ち解けてしまった。
「思った通り、この浴衣…碧瀬さんに似合ってる!」
「ほ、本当…?」
しばらくして、手際よく着付けを終えた山丘さんは可愛らしい笑顔で頷く。
私は浴衣に視線を向けた。
白地に青や青紫の朝顔が散りばめられた浴衣、そして鮮やかな濃紺の帯。
夏らしさ漂う涼しげな浴衣に顔が綻んだ。